愚好録

感想文

Netflixドラマ「人間レッスン」の感想

 

Netflixオリジナルドラマ「人間レッスン」がめちゃくちゃ面白かったので、殴り書きで感想書きます。

 

①まずストーリーがとにかく面白い。韓国ドラマってストーリーの進むスピードがゆっくりなことが多いけど、人間レッスンはストーリーに無駄が全く無い。全部のシーンが伏線になってるし、怒涛の展開である。この脚本を書いたジンハンセさんは新人の脚本家らしいのだが、天才だと思う。全10話だが、無茶苦茶すぐ観れちゃう。一気に観れる。

 

②俳優の演技力が非常に高い。舞台は高校なので主要キャストは若手俳優なのだが、各俳優が役にぴったりなのとみんな演技力が高い。プロデューサーが俳優はオーディションで時間をかけて選んだと言っていて納得した。主人公のキムドンヒさんは人気イケメン若手俳優だけど、地味で芋っぽい男子高校生を見事に演じているし、ヒロインのパクジュヒョンさんは、ギュリという難しい役を器用に演じている。それと脇を固めるベテラン俳優の方々の演技力も相まって、非現実的なストーリーにリアリティをもたらしてくれている。とにかく演技がみんな上手いから演技面では全くイライラしない。

あと余談だけど主人公のジスが泣くシーンで鼻水垂れ流して泣いていたのが印象深かった。あの身体を張った演技も身にせまるものがあった。

 

③演出が痺れる。劇中音楽が超カッコイイ。音楽が流れだすとテンションが上がる。中毒性の高い劇中音楽が良かった。

あと、度々出てくる主人公の妄想の中の物語が奇妙だけど主人公の心理をよく表していて面白い。ストーリーが進むにつれて現実と妄想の狭間がどんどん分からなくなっていっている主人公の精神状態の危うい感じとかがよく伝わってきた。

 

感想(ここからはネタバレ有り)

最初、ギュリにはイライラさせられる。主人公のジスが両親に家を出ていかれて、貧乏で生活費を稼ぐのに精一杯なのに対して、ギュリはお金持ちで生活には困らない恵まれている立場であるのにジスを弄ぶのはやめてくれと。だけど、だんだんとギュリは両親に精神的に追い詰められていることがわかり、ギュリにはギュリにしかわからない家庭内での地獄があって、ギュリ自身もジスと手を組むことでどうにかその地獄から抜け出そうともがいていることに気づいていく。人にはそれぞれの地獄があって、それを人がものさしで比べるものでは無いなと反省しましたね。(まぁ最初のギュリはやってることはひどいんですが…)

 

ジスとギュリの恋愛シーンがほぼ一切ないのがとても良かった。ジスとギュリには恋愛とかそういうものを超えた、お互いの良き理解者であり、深い信頼と絆があるように思えた。私がグッときたシーンだと①カラオケで、ヤクザに捕まったギュリがジスに「早く逃げて!」って叫ぶシーン。普通捕まった時って目の前の仲間に助け求めるじゃないですか。でもギュリは自分はいいからジスに逃げてって必死に言うんですよね。②ミンヒに売春の斡旋とか全てバレてしまった時にジスが「僕1人でやったんだ。ギュリは関係ないんだ」って全部庇おうとするシーン。

お互いに、自分のことを犠牲にして相手を守るその精神は、愛だなと思いました。

 

主人公ジスとイ室長の関係性もめっっっちゃ良いですよね…この物語はイ室長がいることでより良いものになっている。主人公ジスとイ室長は最初顔を合わせたことが無く、イ室長はおじさんの正体が高校生だとは知らないという設定だったけども(実際のところイ室長が最初からわかってたのかは不明)、相手が高校生のジスだとわかった後も、変わらずジスのことをボスとして忠誠を尽くします。その関係性が本当にかっこいいなと思いました。ジスとイ室長の出会いは本編では少ししか描かれなかったけど(あの描き方も凄く良かったけど)スピンオフでガッツリ観たい…

 

ギュリが男前すぎる。ギュリはたとえ無人島に1人だとしても生きていけるんじゃないかと思うぐらい度胸と肝の座り方と賢さが半端なくて惚れてしまう。主人公ジスも度胸あるし、行動力もあるんだけど、やっぱり等身大の男子高校生って感じで時には泣いちゃうし怯えちゃうしどんくさいこと多々あるんだけど、ギュリに関してはそれが無い。ヤクザの連中を1人で始末しようとするぐらいの肝の座り方である。観た人全員間違いなく惚れる。そして凛としていて強く逞しく、生命力に溢れた美しさがある。パクジュヒョンさん、大型新人らしい。私は見事にファンになってしまいました。

 

あとミンヒにジスがおじさんだったことが全てバレてしまった時に、ジスが必死に謝って許しを乞うシーンが切実で辛かったよね。「ただみんなと同じことがしたかっただけで…でも僕にはそれができなくて」と涙ながらに語るジスに、ミンヒよ許してやってくれ…の気持ちになったが、ミンヒからしたら唯一信頼していたイ室長も死んでしまい、絶望感の中にいる時に全ての元凶であるおじさんがまさかの同級生だったと知ったら怒り心頭になるだろうからね…うん…

 

ただ一点いうとするならば、不良少年ギテについて。ギテが後半では彼女であるミンヒのためにひと暴れするのだが、前半ではミンヒのことを全然大切に思っている描写がなく(マジでクソ彼氏)、とにかくミンヒの扱いが酷いので、後半にかけて彼女のために尽力するギテに対しておまえそんな好きやったん?とツッコまずにいられない。それならそうともっと大切にしてる描写があっても良かったんじゃないかなと。あとギテのこと、イキりヘナチョコチンピラだと思ってたから、ヤンキー引き連れてカラオケに来た時はおまえそんな町一番のヤンキーやったんか?!とびっくりしてしまった。だったらギテがもっと不良で強いって設定あっても良かったのではという…どちらもクソどうでもいいツッコミでミアネ…

 

あとみんな口が大変悪くて良かったですね。(褒めてる)

 

毎話最後にテロップで「助けが必要なときは信頼できる人に相談するか、地域の相談窓口に電話してみましょう」と出てくる。あのテロップが怖くもあり、リアルでもあり、皮肉にも捉えられるから凄い。

勿論若者へのメッセージ性もあるが、前半のストーリーの時点では皮肉にもとらえられた。

ジスもギュリも自分達でなんとかしようともがいてどんどん事態が思いもよらぬ方向に転がってしまい、最後は取り返しがつかない状態になってしまった。担任の先生が言ってた「1人で抱え込んでしまうと、大ごとになる。私は運が良く助けてくれる人がいた。」とジスに言うシーンがあるけども、このドラマのメッセージはそれなんだと思った。ジスもギュリも人に相談するチャンスはいくらでもあったのに、賢いゆえに1人で抱え込んで自分達でなんとかしようとしてしまったから最悪の事態になった。あとイ室長が病棟でジスに言った「運が悪かっただけだ」というセリフも、担任の先生の「僕は運が良かったんだ」というセリフと対比になっていて、とっても悲しい気持ちになった。ジスもギュリもほんと運が悪かったよね…それでは済まされないけどさ…。

 

最後のラストの結末とか、伏線の回収が気持ち良すぎて、こんなに綺麗に階段を転がり落ちてラストに至るドラマ今まであったかなというレベルで綺麗な終わり方だった。私はあの終わり方がとっても好きだ。結末を視聴者の想像に委ねる形での終わり方だったけども、あれで良い。わずかな救いがある結末で満足だった。最後ギュリが駆けつけてくれるの本当にかっこよかったな…赤髪のペギュリ、めちゃくちゃかっこよかった…そしてラストであのテーマソングが流れるところがもうかっこよすぎて鳥肌たった。

 

とにかく人間レッスンめっちゃ面白かったよねって話。面白すぎたので、しばらくロスから抜け出せてませんし、この先暫くはこれを超える面白い作品に出会えそうになくて、他の作品を観る気もあんまり起きないでいる…。

韓国ではTOP10入りしてるみたいだし、話題にもなってるようなので、日本でも早くTOP10入りして欲しいな〜〜〜〜!